内側からの視点: 瓶の物語

origami marine b

冷たい水しぶきに、ハッとして目が覚めた。どれくらい眠っていたのだろう? 太陽が、優しく頬に触れる。その心地よいぬくもりを浴びながら、揺られている。波のリズムに合わせて、前へ、後ろへ。ふと、揺れが止まった。わたしは再び、岸辺に戻ってきたのだ。

Jap-trans 06 2

彼女に気が付いたのはその時だった。すらりとしたその姿。たった一人、毅然と地平線を見つめている。透き通った青い目を、遠い未来へとまっすぐに向けて。アーティストなのだろうか、少女はスケッチブックを手に、岩のそばに腰を降ろした。ペンをとり、果てしない空の広がりに集中する。まるで、沈みかけた太陽を見透かしているかのように。すべての秘密を、暗闇が黄昏を連れてくることを、知っているかのように。

かすかな陽光が、夢想の迷宮を彷徨う彼女の邪魔をした。光の反射に気を散らされて、わたしの存在に気付いたようだ。遠くからじっと見つめた後、ゆっくりと歩み寄って来る。岩の間からそっと拾い上げると、彼女はわたしの抱いているものを見つけた。瞬間、その苛立った表情が、ゆるやかに微笑みへと変わった。

自由を夢見た少女: アマンダの物語

Jap-trans 07 2

ありのままでいるのは決して簡単なことではない。どれほどの人が、本当の自分を見つけたと、心から言えるだろう? どれほどの人が、はっきりと答えることができるだろう? このシンプルな問いに。……あなたは、誰?

だけど、わたしの自我は生まれた時からはっきりしていた。母に叩き込まれてきたものだから。村で育った農家の娘。生きがいのある人生を送り、大きく善きことに貢献するのが、わたしの望み。時が来たら、同じような生まれの若者と家族をつくるだろう。近所の人と同じようによく働き、義務を果たし、この村に身を捧げるのだ。

pants-wheat

春には、畑に種をまく。夏が来ると、人々と共に列をなし、蒔いた種が育つのを見守り、作物を収穫する。秋になれば、植物がしおれ枯れていくのを見つめ、そして眠る……。また春に目を覚ますその時まで。人生は、運命の車輪に囚われた繰り返される循環にすぎない。

だから、わたしは空を観察するのが好きだ。限りがないことを知っているからこそ、こんなにも果てしない。誰も、この無限の青の果てを見たことがない。曇りなく汚れない群青色の時も、怒りに満ちた情熱的な大嵐の時も、広大なキャンバスは自然の劇場だ。鳥たちは色とりどりの役者となり、にぎやかに劇を演じてくれる。

destiny-crane

翼がなくても、飛べる:アマンダの物語は続く

鳥というのは、魅力的な生き物だ。だからわたしは鳥たちを、友達のように思い描く。畑に立ち、苦しい仕事に身を捧げる日々の中、彼らは時折訪ねて来ては、遠い国のうっとりするような物語を聴かせてくれる。

夢想、一

Jap-trans 02 2

白い鳥は、まっさらのガウンをまとったお姫様のことを話してくれる。お姫様のお気に入りは、異国から取り寄せた職人仕立ての贅沢なレース。そして彼女は、清く正しく人々を想い国を治める寛大な人でもある。

夢想、二

Jap-trans 03 2

灰色の鳥がさえずり語るのは、蜂蜜桃の果樹園のこと。そこでは未だかつて人間が味わったことのないほど、世にも甘い果実がある。神聖なピンク色の収穫物を仲良く分け合う動物達だけが住んでいる、のどかな楽園。

夢想、三

Jap-trans 01 2

茶色の鳥は教えてくれる。壮大な山々、最も勇敢なる者だけが挑むことを許された荒々しい崖。大自然からの度胸試しは、承認するにふさわしい純粋で勇敢な者だけに与えられる。

目醒めて見る夢:瓶の物語

Jap-trans 04 2

今日はアマンダの誕生日だ。村では祝いが開かれ、たくさんの蒸しパンが彼女の皿に置かれた。疲れ切っていても優美なアマンダの顔は、上品な微笑みに輝き、礼儀正しい言葉でもって、祝福を贈る人々に感謝の相づちを打っている。すべては演技だった。彼女は、自分がどれほどの孤独を感じていたかをわかっていた。

Jap-trans 08

それが、彼女を観た最後の日だった。川岸から拾われてから、日用品を入れるつつましい容器として仕えてきたわたしは今、再び、同じ場所から自由になろうとしている。ポケットをまさぐり、彼女は小さな種を取り出した。紙切れに種をのせ、折り畳む。バラとラベンダーの花びらで丁寧に染められたその紙は、彼女の一番のお気に入りだった。細やかな手作業のあと、紙は折り鶴になった。わたしをきれいに拭うと、そっと折り鶴を中に入れた。

“どうかこの夢を、わたしのような誰かに届けて。代わりに、違う人生を生きてくれるように"。微笑みながら言うと、彼女の指がゆるんだ。川の速い流れが、わたしを抱きとめる。そして、彼女は行ってしまった。今でも覚えている。その微笑みに隠された意味を。わたしにはわかっていた。

希望を育てる少女:マディの物語

Jap-trans 05 2

植物に触れる者は、世界に新しい命を運ぶのだと教えられてきた。わたしたちは失敗から学ぶことで、自然の生態系を保っている。しかし、壮大な自然の力と対峙した時、人間にできることは限られている。今年はよい年ではないし、成長はわずかだ。注意深い計算がなされたはずなのに、なぜそうなったのか? わたしはその答えを知らない。

何かが太陽に反射した。遠くから見て、ガラス瓶だとわかった。拾い上げ、濡れた砂を払うと、中には繊細に折られた折り鶴が入っているのが見えた。

Jap-trans 091

鶴は人々に希望を運んでくると言われている。一体、どこからやって来たのだろう?


Written and illustrated by: Aileen Lee

Translated by: Ai Sasaki

Visual phrases by: Ai Sasaki

Portrait photography by: Darian Wong

Product photography by: Sophia Hsin

Published on May 30th 2015 by
Aileen Lee
Founder Aileen Lee is a self-taught designer with a background in English literature and interest in fashion. So upon receiving her Masters in fashion management, she decided to make her passion a reality.